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tekuilus

『風立ちぬ』と拡散するキットストッカー

本稿を書くにあたり、ネタ元の本人に許可を得たことを記しておきます。
いとこのYは26歳のとき、出戻りモデラーとして、船、おもに戦艦等のジャンルにハマった。勤め人で未婚者である彼は、けっこうな情熱をそれに注ぎ込み、数年後、自室の押入れはプラモデルなどのキット類に占領された。
手先が器用な彼は、小さいころから工作や絵を描くのはとてもうまかった。当初は、買ったプラモデルを一つひとつていねいに作って飾っていた。ここからあるあるネタになるが、いつからか、キット購入ペースが制作ペースを上回っていく。買い物は確かに楽しいし、新製品をながめるのは刺激的で、大枚をはたくという行為はストレス発散にもなる。キットストッカー(本でいうところの積ん読ですね)の誕生だ。
模型を完成させたのはここ10年間でほぼゼロ。元来、作るために買っていたのが、ひたすら買うだけに……。近ごろは高額な海外のガレージキットにも手を出す始末。リアルな話をすると、これらの膨大な量の船のキットを彼が生きているうちに作りあげることはまず時間的に不可能である。

さらに、第二ステージへ。4年前の夏、宮崎駿監督のアニメ映画『風立ちぬ』を封切り日に観たYはいたく感動する。帰り道、量販店に寄り、今まで買ったことのない飛行機のプラモデルを購入する。
「三菱 零式艦上戦闘機 22型/32型、1/72」
戦艦マニアが、戦闘機という未知のジャンルの扉に手をかけてしまった瞬間だ。そこからがまた速い。国内のレシプロ機(プロペラ機)から独英米露の海外機へ。さらに近代~現代までのジェット戦闘機へと興味はとめどなく、面白いように広がってゆく。サイズも1/48、1/72、1/144と揃え、約半年間で相当数(怖いので実数は略)のキットをお買い上げ。
私がショックだったのは数ではなく、あれだけワンジャンルにこだわってきた男が、あるきっかけで、いとも簡単に別のジャンルへと転んでしまったことだ。もはや、一度はじけてしまった物欲、購入欲の拡散力、増殖力は止まらない。Yは今でも船と飛行機に夢中だ。

はたして、彼は「物」が欲しかったのか。実は「買う」「集める」という行為があまりにも楽しくて、それに酔い痴れていたのではないのか? だが、楽しければそれでOKなのでは?
われわれは自身の内側に潜む<欲望>というバケモノをうまく飼いならさなければならない。<欲望>を自分の仕事に生かして成立させている方もいらっしゃる。大切なことは、自分のこの趣味は、愛したモノは「とてもいいもんだ」と胸をはって言い続けられることだと思う。

近ごろ、私の部屋の古本が猛烈に増殖している。よって、本年を買い控え強化年間に指定中。……血は争えないのだろうか。

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最終更新日:2017-02-06 14:03

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